事故で保険を使う?使わない?損しない判断基準と具体的な計算方法

事故で保険を使う?使わない?
損しない判断基準

修理費vs保険料の比較 等級別の具体的計算例 使うべき・使わないべきケース

「保険を使ったら、来年から保険料が上がるって聞いたけど…」
「修理費5万円、保険を使った方がいいのかな?」
損しないための判断基準、等級別のリアルな計算、そして修理費が高額なときの「買取」まで解説します。

梅原隆也

梅原 隆也|カーライフアドバイザー

自動車関連事業で22年。福岡で中古車販売店の店長を務めたのち、板金塗装工場での修行、認証工場での磨き・コーティング担当を経験。受付として月間300件規模の相談に向き合ってきた立場から、業界の裏側を知る「ユーザー側の本音」を発信しています。

バンパーを擦った。ドアを凹ませた。事故のあと、多くの人が同じ場所で足を止めます。——「これ、保険を使った方がいいの?それとも自費?」

先に結論を言います。金額しだい、そして等級しだい。ここを飛ばして「せっかく入ってるんだから使わなきゃ損」で決めてしまうと、翌年からじわじわ効いてくる保険料アップで、かえって手痛い出費になることがあります。

保険を使えば、目の前の修理費は軽くなる。けれど翌年から等級が下がり、そのうえ「事故有係数」という割高な料率が最長3年ぶら下がります。等級ダウンと係数、この二段構えのペナルティ。私はこれをダブルペナルティと呼んでいます。修理費だけを見て判断してはいけない理由が、まさにここにあります。

この記事でお伝えするのは3つ。使うか使わないかの判断式等級別のリアルな計算例、そして——修理費が高額で「そもそも直すべきか」まで揺れたときの、買取という第三の選択肢まで。現場で見てきた実感を交えて、順に整理していきます。

損しないための判断基準

修理費 < 3年間の保険料増加額 → 保険を使わない方が得
目安として、修理費が10万円以下なら保険を使わない方が得なケースが多い
ただし等級によって損益分岐点は大きく変わります

保険を使う・使わないの基本的な判断基準

判断の公式

修理費 と 3年間の保険料増加額 を比較する

修理費 > 保険料増加額

→ 保険を使う

修理費 < 保険料増加額

→ 保険を使わない

なぜ「3年間」で比較するのか?

  • 事故で保険を使うと、翌年の等級が3等級ダウンする(3等級ダウン事故の場合)
  • さらに3年間は「事故有係数」という高い保険料率が適用される
  • つまり「等級が下がる分」+「事故有係数で保険料が高くなる分」のダブルペナルティ
  • だから3年間の保険料増加額のトータルと修理費を比較する

保険会社に「試算」を依頼しよう

「保険を使った場合の、今後3年間の保険料」を保険会社に試算してもらえます。
修理費と比較して、どちらが得か判断しましょう。
※試算を依頼しただけでは、保険を使ったことにはなりません。

「1年間」だけで判断しないこと

「来年の保険料が2万円上がるだけなら、保険を使った方が得」と考えるのは危険です。
保険料が上がるのは3年間続きます。3年間のトータルで比較しないと損します。

ダブルペナルティの仕組み

保険を使ったときの保険料アップは、2つの要因が重なって発生します。
これを理解しないと正確な判断ができません。

ペナルティ①:等級が3つ下がる

  • 3等級ダウン事故(対人・対物・自損・当て逃げ等)→ 翌年3等級ダウン
  • 1等級ダウン事故(盗難・台風・飛び石等)→ 翌年1等級ダウン
  • 等級が下がった分、割引率が低くなる
  • 元の等級に戻るには、無事故で3年かかる

ペナルティ②:事故有係数が適用される

  • 同じ等級でも「無事故」と「事故有」で割引率が異なる
  • 例:10等級の場合、無事故なら−46%だが事故有だと−19%しか割引されない
  • 3等級ダウン事故 → 3年間事故有係数が適用
  • 1等級ダウン事故 → 1年間事故有係数が適用
  • 期間中に再度事故 → 最大6年まで延長

この2つが重なるため、「等級が下がる分」だけを見て判断すると甘い見積もりになります
必ず事故有係数の影響も含めた3年間のトータルで比較してください。

等級別の具体的な計算例

等級によって損益分岐点は大きく変わります。3つのケースで比較してみましょう。
※割引率・保険料は保険会社や契約条件により異なります。数値は判断の考え方を示すための一例です。

ケース1:15等級でバンパー修理5万円

保険を使わない方が得

条件

現在15等級(無事故)/年間保険料5万円/自損事故でバンパー修理5万円
保険を使わない場合保険を使う場合差額
1年目16等級(無事故−54%):4.6万円12等級(事故有−22%):7.8万円+3.2万円
2年目17等級(無事故−55%):4.5万円13等級(事故有−24%):7.6万円+3.1万円
3年目18等級(無事故−56%):4.4万円14等級(事故有−25%):7.5万円+3.1万円
修理費5万円
3年間の保険料増加額約9.4万円
判定保険を使わない方が約4.4万円お得

ケース2:20等級でドア交換20万円

保険を使った方が得

条件

現在20等級(無事故)/年間保険料4万円/自損事故でドア交換20万円
保険を使わない場合保険を使う場合差額
1年目20等級(無事故−63%):4.0万円17等級(事故有−44%):6.1万円+2.1万円
2年目20等級(無事故−63%):4.0万円18等級(事故有−46%):5.9万円+1.9万円
3年目20等級(無事故−63%):4.0万円19等級(事故有−50%):5.4万円+1.4万円
修理費20万円
3年間の保険料増加額約5.4万円
判定保険を使った方が約14.6万円お得

ケース3:7等級で修理10万円(要注意)

保険を使わない方が得

条件

現在7等級(無事故)/年間保険料7万円/自損事故でバンパー・フェンダー修理10万円
保険を使わない場合保険を使う場合差額
1年目8等級(無事故−38%):6.2万円4等級(割増+7%):10.7万円+4.5万円
2年目9等級(無事故−44%):5.6万円5等級(−2%):9.8万円+4.2万円
3年目10等級(無事故−46%):5.4万円6等級(−13%):8.7万円+3.3万円
修理費10万円
3年間の保険料増加額約12万円
判定保険を使わない方が約2万円お得

等級が低いときは特に注意

等級が低い(6〜10等級あたり)ときに事故を起こすと、4等級以下の「割増」になるケースがあります。保険料の増加額が大きくなるので、10万円の修理でも保険を使わない方が得になります。

等級別の損益分岐点(目安)

  • 20等級(高い等級):修理費6〜8万円以上なら保険を使った方が得
  • 15等級(中程度):修理費10〜15万円以上なら保険を使った方が得
  • 7〜10等級(低い等級):修理費15〜20万円以上でないと保険を使わない方が得
筆者
現場からの経験談

受付で相談を受けていて、いちばん多かった思い込みが「保険は使うもの」でした。修理費が10万円以下なら、使わない方が得なケースが多い。特に等級が低い時期(6〜15等級あたり)は、使った瞬間に保険料の跳ね上がり方が大きい。ここは声を大にして言いたいところです。

逆に、20等級をずっと守ってきた方は、多少の修理費なら使っても損しにくい。とはいえ、これはあくまで目安。最後は保険会社に3年分を試算してもらい、実際の数字で決める。感覚ではなく、紙に出た金額で。それが一番確実です。

迷わず保険を使うべきケース

保険を使うべきケース

  • 相手への賠償が発生する事故(対人・対物事故)→ 賠償は保険の基本。自費は非現実的
  • 修理費が20万円以上の場合 → ほとんどの等級で保険を使った方が得
  • 車両が全損で買い替えが必要な場合 → 数十〜数百万円の損害
  • 人身事故で治療費が発生する場合 → 治療費は予測が難しい
  • 相手との過失割合で自分の負担が大きい場合 → 自己負担分が高額に

対人・対物事故は保険を使うのが基本

「保険を使うかどうか迷う」のは、主に車両保険(自分の車の修理)の話です。相手への賠償が発生する事故では、保険を使うのが基本です。数十万〜数百万円の賠償を自費で払うのは現実的ではありません。

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保険を使わない方が得なケース

保険を使わない方が得なケース

  • 修理費が10万円以下の場合(特に等級が低いとき)
  • 小さな傷や凹み(バンパーの擦り傷、小さなへこみなど)
  • 等級が低い(6〜10等級あたり)で、割増に転落するリスクがある場合
  • 自損事故で、自分の車の修理だけで済む場合
  • 修理しなくても問題ない程度の損傷の場合

よくある修理と費用の目安です。この金額帯なら保険を使わない方が得になるケースが多いです。

修理内容費用目安
バンパーの擦り傷(小)1〜3万円
バンパーの擦り傷(大)・凹み3〜5万円
ドアの擦り傷3〜5万円
フェンダーの凹み3〜8万円
バンパー交換5〜10万円
ドアミラー交換2〜5万円
筆者
プロからのアドバイス

「せっかく保険に入ってるんだから、使わなきゃもったいない」——その気持ち、痛いほどわかります。

でも、保険は大きな損害に備えるためのもの。小さな修理で使ってしまうと、3年間トータルで何万円も損をする。これが現実です。

受付時代、「5万円の修理で保険を使って、3年で10万円以上も保険料が上がった」というお客様は、決して珍しくありませんでした。だからこそ覚えておいてほしい。「保険を使わない」という選択肢が、あなたにはあるということを。

修理費が車の価値を超えたら
「買取」という選択肢

「使う・使わない」の前に、そもそも直すべきか——。
修理費が高額なときは、この視点が抜け落ちがちです。

「経済的全損」を知っておく

  • 修理費が車の時価額を上回る状態を「経済的全損」と呼ぶ
  • 車両保険は原則時価額までしか支払われない(時価30万円の車に50万円の修理費は出ない)
  • つまり保険を使っても差額は自己負担になり、高い保険料アップまで背負う
  • 年式の古い車・過走行車ほど、このワナにハマりやすい

ここで見落とされがちなのが、事故車の買取という選択肢です。動かない車、大きく損傷した車でも、部品取りや海外需要で値がつくことは珍しくありません。「直して乗り続ける」のと「買い替える」のと、どちらが総額で得か。それを比べずに修理へ進むと、あとで「あのとき売っておけば」と後悔する方がいます。

直して乗り続けたい人へ

愛着がある、修理費が時価内に収まる、まだ十分乗れる。そんなときは修理が正解。信頼できる工場の見積もりで、保険の要否を冷静に判断しましょう。

買い替えも視野の人へ

修理費が時価を超える、古い・過走行、乗り換えを考えていた。そんなときは、修理見積もりと買取額を並べて比較。手放す方が総額で得なこともあります。

筆者
本音

はっきり言っておきます。修復歴が付いても乗り続けたいかどうかを決めるのは、私たちではなく、あなた自身です。

こちらの仕事は、修理の見積もりと買取の見積もり、両方を正直に並べること。そこまで。売れとも直せとも言いません。数字を見て、納得して決めてもらう。それがいちばん後悔の少ない選び方だと、22年やってきて思っています。

修理も買取も、まとめて診断

「直す」か「売る」か。
両方の見積もりを並べて、あなたが決める。

事故車の写真を送るだけ。修理費の目安買取額の目安を同時にお出しします。
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判断から支払いまでの流れ

1

事故が起きたら、まず保険会社に連絡

保険を使うかどうかに関わらず、事故が起きたらまず保険会社に連絡します。連絡しただけでは保険を使ったことにはなりません。示談交渉や相手の修理代の精査も保険会社にしてもらいましょう。

2

修理費の見積もりを取る

修理工場で見積もりを取ります。保険会社指定の工場でなくてもOK。複数の工場で見積もりを比較するのもおすすめです。

3

保険会社に「保険料の試算」を依頼

「保険を使った場合の、今後3年間の保険料」を試算してもらいます。この数字が判断の根拠になります。

4

修理費と保険料増加額を比較して判断

修理費と3年間の保険料増加額を比較します。修理費の方が大きければ保険を使う、保険料増加額の方が大きければ自費で修理。修理費が時価を超えるなら買取も比較を。

5

保険会社に「使う」「使わない」を伝える

判断が決まったら保険会社に連絡。「保険を使わない」と決めた場合も必ず伝えましょう。

6

修理・支払い

保険を使う場合は保険会社から修理工場に保険金が支払われます。使わない場合は自分で修理費を支払います。

「やっぱり保険を使わない」と後から変更できる

最初に「保険を使う」と伝えていても、保険金が支払われる前なら変更できます。修理費が確定してから判断しても遅くありません。

等級に影響しない「ノーカウント事故」の活用

保険を使っても等級が下がらない「ノーカウント事故」があります。
これらは遠慮なく使いましょう。

ノーカウント事故に該当するもの

  • 人身傷害保険のみを使用した場合
  • 弁護士費用特約のみを使用した場合
  • ロードサービスのみを使用した場合(バッテリー上がり・パンク等)
  • ファミリーバイク特約のみを使用した場合

もらい事故では弁護士費用特約を積極的に使おう

過失割合0:100のもらい事故では、自分の保険会社は示談交渉ができません。自分で相手と交渉するか、弁護士に依頼する必要があります。弁護士費用特約は等級に影響しないので、もらい事故では積極的に使いましょう。

保険を使う?使わない?判断チェックリスト

→ 保険を使うべきケース

  • 相手への賠償が発生する(対人・対物事故)
  • 修理費が20万円以上
  • 車両が全損で買い替えが必要
  • 人身事故で治療費が発生
  • 修理費 > 3年間の保険料増加額

→ 保険を使わない方が得なケース

  • 修理費が10万円以下
  • 小さな傷や凹みだけ
  • 等級が低い(6〜10等級あたり)
  • 自損事故で自分の車の修理だけ
  • 修理費 < 3年間の保険料増加額

よくあるご質問

Q保険会社に事故を報告しただけで、等級は下がりますか?

いいえ、報告しただけでは等級は下がりません。等級が下がるのは保険金が支払われた場合です。報告だけして「保険を使わない」と決めれば等級に影響はありません。

Q保険を使わない場合、示談交渉は自分でやるのですか?

車両保険(自分の車の修理)を使わない場合でも、対人・対物の示談交渉は保険会社が行ってくれます。ただし自分の過失が0%の場合(もらい事故)は保険会社が交渉できないため、自分で交渉するか弁護士費用特約を使って弁護士に依頼することになります。

Q一度「保険を使う」と言った後に、変更できますか?

はい、保険金が支払われる前であれば変更できます。修理費が確定してから判断しても遅くありません。迷っている場合は保険会社にその旨を伝えておきましょう。

Q免責金額(自己負担額)とは何ですか?

車両保険を使う際に自己負担する金額のことです。例えば免責金額が5万円の場合、修理費が10万円なら保険から支払われるのは5万円です。免責金額を高く設定すると保険料が安くなります。

Q盗難や台風被害の場合、保険を使うと等級は下がりますか?

はい、下がります。ただし「1等級ダウン事故」として扱われ、通常の事故(3等級ダウン)より影響が小さいです。事故有係数の適用期間も1年間だけなので、保険を使った方が得になるケースが多いです。

Q相手がいる事故で、自分の保険は使う必要がありますか?

過失割合によります。例えば相手8:自分2の事故で修理費が10万円の場合、相手から8万円の賠償を受けられますが残り2万円は自己負担です。この2万円を車両保険でカバーするかどうかを判断します。2万円なら自費の方が得なことが多いです。

Q修理費が車の価値より高いときは、保険を使うべきですか?

修理費が車の時価を上回る「経済的全損」の場合、車両保険は時価額までしか支払われず、差額は自己負担になります。このケースでは、修理して乗り続けるより、事故車として買取に出した方が総額で得になることがあります。修理見積もりと買取額の両方を並べて比較するのがおすすめです。

Q事故有係数適用期間中にまた事故を起こすとどうなりますか?

事故有係数の適用期間が延長されます。最大で6年まで延長されるため、その間ずっと高い保険料が適用されます。等級が下がっている期間中は特に慎重な運転を心がけてください。

保険を使うかどうかの判断ポイント

  • 修理費と3年間の保険料増加額をトータルで比較する
  • 修理費10万円以下なら、保険を使わない方が得なケースが多い
  • 等級が低いときは保険料の増加幅が大きく、特に慎重に判断する
  • 対人・対物事故は迷わず保険を使う
  • 修理費が車の時価を超えるなら、修理と買取の両方を比較する
  • ノーカウント事故(弁護士特約・人身傷害等)は等級に影響なし。積極的に使う
  • 迷ったら保険会社に3年間の保険料を試算してもらい、数字で判断する

保険を使うかどうかは、感情ではなく数字で判断する。
そして、修理費が高額なときは「そもそも直すべきか」まで一歩引いて考える。この2つを押さえておけば、大きな失敗はまずありません。

迷ったら、写真を1枚

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梅原隆也
この記事を書いた人

梅原 隆也

自動車関連事業で22年の経験を持つカーライフアドバイザー。福岡で中古車販売店の店長を務めたのち、板金塗装工場での修行、認証工場での磨き・コーティング担当を経験。受付として月間300件規模の相談に向き合ってきた立場から、「業者側の常識」ではなく「ユーザー側の本音」を発信しています。